兎眼(とがん)とは?原因や症状、治療方法についてわかりやすく解説
作成日: 2023/01/17 更新日: 2024/11/13

兎眼とは?1)~5)
兎眼とは、何らかの原因でまぶた(眼瞼)を完全に閉じることができず、いつも目が少し開いたままになってしまう状態のことをいいます。もともとは、「ウサギはまばたきが少なく、開眼したまま寝る」といわれていたことからこの名前がついたそうですが1),2)、現在ではウサギも目を閉じて眠ることがわかっているため、事実とは異なるようです1),2)。
兎眼の程度は、夜眠っている間のみ、まぶたをうまく閉じることができない夜間兎眼のような軽症例から、常にまぶたをうまく閉じることができない重症例までさまざまです。軽症例では、目の乾燥やドライアイなどの訴えで受診され、目の表面にも大きな異常を伴わない場合もありますが、重症例になると、角膜(くろ目)の表面が傷ついたり、部分的にはがれたりしてしまい、最終的には角膜が濁ったり、視力低下を招いたりすることもあります。
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兎眼の原因1)~5)
兎眼を生じる原因にはさまざまなものがありますが、大きく分けて、顔面神経麻痺によるもの、まぶたの形態変化や異常によるもの、眼球突出によるものが挙げられます。
顔面神経麻痺
顔面神経麻痺とは、まぶたの開け閉めに関係している神経が麻痺してしまった状態のことで、顔面神経麻痺によって生じる兎眼は、麻痺性兎眼ともいわれます。脳腫瘍や脳梗塞、けがや頭部手術時の神経障害、感染などが原因となるほか、原因がはっきりしていないものもあります。顔面神経麻痺は、兎眼の原因の中で最も頻度が高いとされています。
まぶたの形態変化や異常
まぶたの瘢痕(はんこん)
瘢痕とは傷あとのことです。まぶたの外傷や手術などで、まぶたの形や向きが変わってしまい、まぶたが閉じられなくなることがあります。これは、瘢痕性兔眼と呼ばれます。
外瞼外反(がんけんがいはん)
下まぶたが外側に反り返ってしまい、まぶたが閉じにくくなることがあります。これには、年齢による「加齢性」のもののほか、顔面神経麻痺による「麻痺性」のものや、外傷や手術後の皮膚の瘢痕による「瘢痕性」のものがあります。
眼瞼欠損(がんけんけっそん)
まぶたが生まれつきなかったり、外傷や手術などでなくなってしまったりした状態のことです。
眼球突出
病気などが原因で、眼球(目玉)が後ろ側から押し出され、少し前方に出てきてしまう状態のことです。眼球が前に出てくることで、まぶたがうまく閉じられなくなることがあります。眼球突出は、甲状腺機能亢進症や、眼窩(がんか)と呼ばれる目が収まっているくぼみの病気(眼窩腫瘍、眼窩内炎症など)によって生じます。
兎眼の症状1)~5)
まぶたをうまく閉じられないことで目が乾燥し、目がかすむ、痛むなどドライアイのような症状がみられます。ゴロゴロする異物感を感じることもあります。また、この状態が長期間持続すると、結膜(しろ目)が充血したり、角膜に傷がついてしまったりします。さらに、まばたきがしにくく、涙が目の表面を十分に洗浄できないため、、角膜の傷から細菌やウイルスに感染しやすくなり、角膜炎を起こしたり、角膜に濁りが生じ、視力低下を招いたりすることもあります。角膜が濁ることを角膜混濁といい、一度生じると元に戻りにくいため注意が必要です。
兎眼の検査・診断2),4)
兎眼の診断自体に特別な検査方法があるわけではありません。兎眼が疑われる場合には、通常行う眼科的検査に加えて、まぶたをうまく閉じることができるかどうかを診察で確かめます。外傷やまぶたの手術歴などの問診も行います。
また、兎眼では原因に応じた治療が必要なので、原因を確かめることが大切です。そのため、顔面神経麻痺による兎眼や、眼球突出による兎眼が疑われる場合には、頭部や眼窩内の様子を詳しく見るために、CTやMRIといった画像検査が行われます。その他の病気により兎眼が引き起こされていると考えられる場合には、疑われる病気の診断に必要な画像検査や血液検査などを行います。
兎眼の治療法1)~5)
兎眼の原因となっている病気が明らかな場合には、その病気に対する治療を行います。その上で、目の表面の乾燥を防ぐために、人工涙液やヒアルロン酸入りの目薬、眼軟膏などを塗布したり、眼帯をしたり、テーピングをして目を閉じたりすることもあります。また、手術が必要になる場合もあります。
まとめ
まぶたには、目を乾燥や異物から守るという重要な役割があります。このため、うまく閉じることができない場合、目にさまざまな障害が起きてしまう可能性があります。まぶたをうまく閉じることができないなど、何か気になる症状がみられた場合には、ためらうことなく眼科を受診するようにしてください。
<参考資料>
1) 医療情報科学研究所 編:「病気がみえる vol.12 眼科」 第1版 メディックメディア, 2019
2) Medical Note:兎眼
https://medicalnote.jp/diseases/%E5%85%8E%E7%9C%BC/
3) 大路 正人 他 編:「今日の眼疾患治療指針」 第4版 医学書院, 2022
4) 上田 幸典:Frontiers in Dry Eye 10(2), 122-124, 2015
5) HOSPITA.JP:兎眼
https://www.hospita.jp/disease/366/











