シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズとは?材質の特徴とメリットを解説
ソフトコンタクトレンズに使われる「シリコーンハイドロゲル」は、酸素を通しやすいシリコーン素材と、水分になじみやすいハイドロゲル素材を組み合わせた素材です。従来のハイドロゲル素材との違いを知っておくと、酸素透過性や装用感、目の健康を考慮しながら、自分に合うレンズについて眼科医と相談する際の参考になります。
この記事では、従来のハイドロゲル素材との違いや、シリコーンハイドロゲル素材のメリット、使用時の注意点、酸素透過率や含水率との関係について解説します。
作成日: 2025/10/14 更新日: 2026/10/05

この記事のポイント
- シリコーンハイドロゲルは、酸素を通しやすいシリコーン素材と、水分になじみやすいハイドロゲル素材を組み合わせたソフトコンタクトレンズ素材です。
- 従来のハイドロゲル素材とは酸素の通し方が異なり、含水率を高めなくても酸素透過性を確保しやすいことが特徴です。
- 酸素透過率は高いほどよいとは限らず、素材の硬さや装用感とのバランスもレンズ選びで考慮したいポイントです。
シリコーンハイドロゲル素材とは?
ソフトコンタクトレンズに用いられるシリコーンハイドロゲル素材とは、シリコーン素材とハイドロゲル素材を組み合わせたものです。
なお、「シリコンハイドロゲル」と表記されることもありますが、コンタクトレンズの素材名としては「シリコーンハイドロゲル」が一般的です。シリコンは元素のケイ素を指し、シリコーンはケイ素と酸素の結合を骨格にもつポリマーの総称です。
シリコーン素材は、酸素を通しやすい性質をもつとされています1)。コンタクトレンズ装用中はレンズが角膜を覆うため、素材が酸素を通しやすいことは、角膜へ酸素を届けるうえで重要です。
一方、ハイドロゲル素材は水分となじみやすく、やわらかく角膜にフィットしやすい特徴があります2)。
この2つの素材を組み合わせたものが、シリコーンハイドロゲル素材です。カラーコンタクトレンズ(カラコン)にも使われることがあります2)。
シリコーンハイドロゲル素材は、従来のソフトコンタクトレンズとどう違う?
ハイドロゲル素材とは、従来のソフトコンタクトレンズに用いられている素材の総称です1,2)。
角膜(黒目)には血管がないため、代謝に必要な酸素の大半は空気中から取り込んでいます。コンタクトレンズを装用すると、レンズが角膜を覆うため、角膜に届く酸素の量が制限されます3)。
角膜の酸素不足が続くと、浮腫(角膜が水分を含んで膨らんでしまう状態)やびらん(角膜の表面が部分的にとれた状態)といった目のトラブルにつながることがあります2,3)。そのため、コンタクトレンズを安全に使用するには、「酸素透過性(酸素の通りやすさ)」が重要です。
酸素の通し方は、レンズの素材によって異なります。ハイドロゲル素材とシリコーンハイドロゲル素材の主な違いは、以下のとおりです。
比較項目 | ハイドロゲル素材 | シリコーンハイドロゲル素材 |
|---|---|---|
酸素の通し方 | レンズに含まれる水分を介して通す | レンズに含まれる水分に加え、シリコーン成分を介して酸素を通す |
酸素透過性を高めるための工夫 | 含水率を高めたり、レンズを薄くしたりする | 含水率を高めなくても、酸素を通しやすい |
硬さ・形状 | やわらかい一方、薄くすると破れやすい場合がある | 比較的硬く、形状を保ちやすい |
ハイドロゲルを使った従来のソフトコンタクトレンズは、レンズ内の水を介して角膜に必要な酸素を届けます2)。したがって、酸素をより多く目に届けるためには、レンズが含む水分量(含水率)を高めたり、レンズを薄くしたりする工夫が必要です2)。
しかし、ハイドロゲル素材の場合、含水率を高めると水分が蒸発しやすかったり、乾燥感が出やすくなったりすることがあります1,2)。また、レンズを薄くすると破れやすくなるデメリットもあります1,2)。
シリコーンハイドロゲル素材の場合、酸素はレンズの水分だけでなく、シリコーン成分を介しても通過します。そのため、含水率を高めなくても、より多くの酸素が目に届きます1,2)。

酸素透過率とは?
酸素透過率は、コンタクトレンズ装用中にどれくらい酸素が目に届きやすいかを示す指標で、Dk/t値で表されます。
Dk値はレンズ素材そのものの酸素の通しやすさ、tはレンズの厚みを示します。Dk/t値はDk値をtで割った値で、一般に数値が高いほど酸素を通しやすいことを示します4,5)。
ソフトコンタクトレンズに求められる酸素透過率の目安である「Holdenの基準5)」によると、角膜が浮腫(むくみ)を生じないために必要なDk/t値は、終日装用タイプで24.1*1以上、連続装用タイプで87.0*1以上とされています。なお、Dk/t値が約80を超えると、数値が高くても目に届く酸素の量は変わらなくなります6)。
*1:×10-9 (cm・mLO₂ /sec・mL・mmHg) 測定条件35℃ (-3.00Dの場合)
アキュビュー® 製品の酸素透過率
シリコーンハイドロゲル素材のアキュビュー® 製品の酸素透過率(Dk/t値)*2は、以下のとおりです。
- ワンデー アキュビュー® オアシス® MAX:121
- ワンデー アキュビュー® オアシス® :121
- ワンデー アキュビュー® トゥルーアイ® :118
- アキュビュー® オアシス® :147
*2:×10-9(cm・mLO₂ /sec・mL・mmHg) 測定条件35℃(-3.00Dの場合) Polarographic method, boundary and edge corrected.
シリコーンハイドロゲル素材のメリット
シリコーンハイドロゲル素材には、主に3つのメリットがあります。
目の負担が少ない
上で述べたように、シリコーンハイドロゲルは酸素が通りやすい素材とされています1,2)。そのため、装用中に角膜へ酸素が届きやすいことが特長です。
ただし、目の状態や装用時間、レンズとの相性によって装用感や適性は異なるため、眼科医の指示に従って使用することが大切です。
レンズの形状が良好に保たれる
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズは、ハイドロゲル素材のレンズに比べて硬い傾向があるとされています1,7)。そのため、形状を保ちやすい一方で2)、素材や設計によっては装用感に影響することがあります。
発売当初のシリコーンハイドロゲルレンズでは、素材の硬さが目のトラブルにつながる場合もありましたが、現在はやわらかさに配慮した製品も使われています1,7)。
乾燥感が出にくい
シリコーンハイドロゲル素材は、含水率を高めなくても酸素透過性を確保しやすいという特長があります。そのため、レンズ内の水分蒸発に伴う乾燥感が生じにくいとされる場合があります。
従来のハイドロゲル素材では、酸素透過性を高めるために、含水率を高くするなど、さまざまな工夫が施されています。しかし、装用中にレンズ内の水分が蒸発すると、目の乾燥感につながることがあります。
一方、低含水のシリコーンハイドロゲル素材の製品では、レンズ内の水分蒸発に伴う乾燥感が生じにくいとされる場合があります1,2)。
ただし、シリコーンハイドロゲル素材であれば、レンズが乾燥しないわけではありません。乾燥感は、涙の量や装用環境、レンズと目の相性などによっても異なります。
装用感には個人差がある
シリコーンハイドロゲル素材は、一般にハイドロゲル素材より硬い傾向があります。そのため、装用時にレンズの硬さを感じる場合があります。
一方、近年は、やわらかさに配慮した製品も登場しています。ただし、レンズの厚みや形状、素材の配合には製品ごとに違いがあり、角膜の形状や涙の量などによって装用感にも個人差があります。
コンタクトレンズを購入する前は眼科で検査を受け、目の状態に合ったレンズの処方を受けることが大切です。
酸素透過率は高ければ高いほど良いわけではない
酸素透過率は、コンタクトレンズ装用中に角膜へ届く酸素の量に関わります。ただし、Dk/t値が約80を超えると、数値が高くなっても角膜へ届く酸素量は大きく変わりにくいとされています6)。
また、シリコーンの割合を増やすと酸素を通しやすくなる一方で、レンズが硬くなり、装用感に影響する場合があります。

そのため、酸素透過率だけでなく、素材の硬さや装用感とのバランスも確認することが大切です。
よくある質問
シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズについて、よくある質問に回答します。
A. 「シリコンハイドロゲル」と表記されることもありますが、コンタクトレンズの素材名としては「シリコーンハイドロゲル」が一般的です。シリコンは元素のケイ素を指し、シリコーンはケイ素と酸素の結合を骨格にもつポリマーの総称です。
A. 酸素透過率は、コンタクトレンズ装用中に角膜へ酸素が届きやすいかを示す大切な指標です。ただし、酸素透過率だけでレンズを選べばよいわけではありません。
素材の硬さや装用感、目との相性も製品によって異なるため、製品ごとの特徴と目との相性を踏まえて選ぶことが大切です。
A. シリコーンハイドロゲル素材は、含水率を高めなくても酸素透過性を確保しやすいという特徴があります。そのため、レンズ内の水分蒸発に伴う乾燥感が生じにくいとされる場合があります。
ただし、乾燥感は涙の量や装用環境、レンズと目の相性によっても異なります。
A. シリコーンハイドロゲル素材は、カラーコンタクトレンズに使われることもあります。ただし、素材や設計、装用感は製品によって異なるため、製品ごとの特徴を確認することが大切です。
A. シリコーンハイドロゲル素材のレンズが目に合うかは、目の状態によって異なります。全ての方に同じような見え方や装用感が得られるとは限りません。
同じ素材でも、レンズの厚みや形状などは製品によって異なります。また、装用感は角膜の形状や涙の状態などによっても変わります。
A. 1dayタイプ(1日使い捨て)と2weekタイプ(2週間頻回交換)では、レンズの交換頻度とレンズケアの有無が異なります。
1dayタイプ(1日使い捨て)は、一度外したレンズを再装用せず、毎回新しいレンズに交換するため、レンズケアは必要ありません。一方、2weekタイプ(2週間頻回交換)は、開封日から14日で交換します。装用後は毎回、洗浄、すすぎ、消毒、保存など、製品に合ったレンズケアが必要です。
それぞれの特徴を踏まえ、ご自身の目の状態や使用目的、ライフスタイルに合った製品について、眼科医に相談しましょう。
コンタクトレンズは高度管理医療機器です。購入前に眼科で検査を受け、眼科医の指示に従って目に合う製品を購入しましょう。装用中に痛みや充血、見えにくさなどの異常を感じた場合は、レンズを外して眼科を受診してください。
シリコーンハイドロゲル素材を使ったコンタクトレンズ
シリコーンハイドロゲル素材を使用したアキュビュー® 製品については、製品一覧ページで確認できます。目の状態やライフスタイル、使用目的に合うレンズは人によって異なるため、製品ごとの特徴を確認して検討しましょう。
まとめ
シリコーンハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズは、酸素透過性の高さが特長です。一方で、酸素透過率だけでなく、素材の硬さや装用感、目との相性も考慮して選ぶことが大切です。
ただし、装用感や目との相性、必要なレンズケアは製品や目の状態によって異なります。購入前に眼科で検査を受け、眼科医の指示に従って正しく使用しましょう。
<参考資料>
1) 日本コンタクトレンズ学会. コンタクトレンズ診療ガイドライン. 日眼会誌. 2014; 118(7): 557-591.
2) 久保田慎著・畑田豊彦監修. おもしろサイエンス コンタクトレンズと眼鏡の科学. 日本工業新聞社, 2018, p.53-59.
3) 糸井素純, 稲葉昌丸, 佐野研二, 工藤昌之, 針谷明美. コンタクトレンズ眼障害 ひと目でわかるトラブルシューティング(糸井素純, 稲葉昌丸編). 中山書店, 2006, p. 47-49, 68-69, 74-79, 144-149, 184-185, 188-189.
4) 濱野孝. コンタクトレンズ Ad Libitum 改訂第2版(大橋裕一ほか編). 2004, p.159-160.
5) Holden BA, et al.:Invest Ophthalmol Vis Sci. 1984; 25(10): 1161-1167.
6) Johnson & Johnson VISION CARE, INC. データ.
7) 二宮さゆり. 視覚の科学. 2021; 42(4): 80-85.
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