視力とは?「視力」の定義と種類は?
眼科での検査方法や注意点を解説
「視力」について何となく理解していても、何を意味しているのか、どのような基準で決められているのか、知っている方は少ないかもしれません。この記事では、視力の定義について解説します。
作成日:2025/09/19 更新日:2025/09/19

視力と度数の違い
視力と度数はよく混同されます1)。
視力:一言で表すと「物を見る能力」です2)。ただし、実際には視力が「ものを見る力」の全てというわけではありません。本来「ものを見る能力」は、視力に加えてコントラスト、明るさなどの要素も考慮に入れた総合的なものです1)。
視力について、もう少し専門的に言い換えると、「外の世界のものを(細部まで)見分けられるかの能力」を数値化したものです3)。
度数:コンタクトレンズや眼鏡を用いて、視力を矯正する度合いを数値で表したものです。
コンタクトレンズや眼鏡を作るときは視力・屈折検査を行い、その結果をもとに度数が決定されます1,4,5)。コンタクトレンズも眼鏡も同じく視力を矯正するものですが、コンタクトレンズは目に直接のせて使うのに対して、眼鏡は目とレンズの間に距離があるため、コンタクトレンズと眼鏡で同じ度数のレンズを使っても見え方に差が生じることがあります6)。普段眼鏡を使用されている方も、コンタクトレンズを作る際は、度数を改めて調べてもらいましょう。
視力の表記法と度数の単位
視力の表記法
視力は、多くの人が「視力検査」と聞いて思い浮かべる、切れ目の入ったC字型のマーク(ランドルト環)を使って測定します1,4,5)。
視力検査では、いろいろな大きさのランドルト環を使い、どのくらい狭い切れ目まで見分けられるか調べることで、「2つの点を別々のものと認識できる能力」を測定しています1-5)。直径7.5mm・切れ目の幅1.5mm・太さ1.5mmのランドルト環を5m離れた場所から見たときに切れ目を判別できる視力が、「視力1.0」と定義されています5)。

度数の単位
度数は先ほど『視力を矯正する度合い』と説明しましたが、「屈折異常を矯正するのに必要なレンズの強さ」などと言いかえることもできます。
度数は「D(ジオプター)」という単位で表され、近視の場合はマイナス、遠視の場合はプラスの値になります1,5,6)。Dの数値がゼロから離れるほど、いわゆる「度の強い」レンズが必要になります。
矯正の必要性はどう判断する?
コンタクトレンズや眼鏡の矯正の必要性は、個人の生活スタイルや年齢によって異なります。
例えば、普通自動車が運転できる普通第一種免許を取得するには、以下の条件をクリアするべく、必要に応じて矯正が必要です7)。
- 視力が両眼で0.7以上、かつ、片眼でそれぞれ0.3以上
- 一眼の視力が0.3未満または一眼が見えない方は
他眼の視野が左右150度以上で視力が0.7以上
※視力は矯正視力を含む
小学生では、視力が0.3未満(D判定)だと教室の前の席からでも黒板の見え方が十分とはいえず、0.3以上0.7未満(C判定)の方も後ろの席からは黒板が見えにくいことがあります8)。まずは、どのような場面で矯正が必要なのか、考えてみましょう。
なお、厚生労働省は、コンタクトレンズを「高度管理医療機器」、眼鏡を「一般医療機器」に指定しています。「コンタクトレンズや眼鏡が必要かもしれない」と感じた際には、あくまでも自己判断せずに、まずは眼科を受診して検査や診断を受けたうえで、眼科医の指示に従ってください。
視力の検査方法と視力の種類
裸眼視力と矯正視力
コンタクトレンズや眼鏡で矯正していない状態の視力を裸眼視力といいます。一方、コンタクトレンズなどで矯正した視力が矯正視力です。ちなみに、検査用のレンズを使ったときの視力も、矯正しているので矯正視力になります。
視力と度数に関する注意点
視力が同じ人でも度数は違う可能性あり
「視力」と「度数」は違う尺度ですから、視力が同じ人であっても、使用するコンタクトレンズや眼鏡の度数が違うこともありえます。屈折異常の矯正に使うコンタクトレンズや眼鏡の度数は、目の状態や使用目的によって変わります。また、同じ人でもコンタクトレンズと眼鏡で度数が異なることもあります。
コンタクトレンズや眼鏡を作る際には、視力検査の結果などから度数を勝手に判断せず、ご自身の目に合ったものを眼科医に処方してもらうようにしましょう。
度数が合わないレンズの使用は危険
度数が合わないコンタクトレンズや眼鏡を使い続けると、眼精疲労、視力低下(ものを見分ける能力が低くなる;焦点が合わない、二重に見えるなど)の症状が現われます9)。また、目に異常がある状態でコンタクトレンズの装用を続けると、重篤な目の障害や失明につながる危険性があります。自分では気づけなくても、診察を受けたら目のトラブルが見つかる、ということもあります10)。
コンタクトレンズや眼鏡を使用する場合には、必ず眼科を受診して検査を受けてから、処方してもらうようにしましょう。度数が適正かどうか、定期的に検査を受けることも重要です10)。
レンズが合っているか、眼科で定期的に目のチェックを
目の状態は、時が経つと変化していきます。眼科で視力などの各種検査を定期的に受けて目の状態をチェックし、コンタクトレンズや眼鏡が今のご自身の目に合っているかどうか確認しましょう10)。
まとめ
視力とは、私たちの見える力を数値化したものです。視力低下が気になったら、眼科医に相談してみましょう。
1) 荒井宏幸. 「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療. 講談社, 2017, p. 8-17, 32-34.
2) 広辞苑 第七版. 岩波書店, 2018, p.1487.
3) 南山堂医学大辞典. 南山堂, 2020, p.1183-1184.
4) 井上賢治監修. 明解!あなたの処方箋 最新版 本気で治したい人の目の病気. 白内障・緑内障・加齢黄斑変性症. 学研パブリッシング, 2013, p.40-41.
5) 水木信久. 外園千恵, 張佑子執筆協力. 標準眼科学 第14版(中澤満ほか編). 医学書院, 2018, p.354-356, 375-377.
6) 眼科ケア 2009年冬季増刊 眼科スタッフのためのCL(コンタクトレンズ)で困ったときに読む本. 2009, p.41, 77, 283.
7) 道路交通法 施行規則第23条
8) 公益財団法人日本学校保健会:児童生徒等の健康診断マニュアル 平成27年度改訂. 平成27年(2015年)
9) 糸井素純, 稲葉昌丸. コンタクトレンズ眼障害 ひと目でわかるトラブルシューティング(糸井素純, 稲葉昌丸編). 中山書店, 2006, p. 44-46, 60-61, 66-67, 80-81.
10) 前田直之. コンタクトレンズ Ad Libitum 改訂第2版(大橋裕一ほか編). 2004, p.59-62.