遠視とは?見え方の仕組みや原因、大人・子ども別に症状の違いを解説
遠視は、遠くがよく見える人のことだと思っている方が多いかもしれませんが、実はそうではなく、「ピント合わせをしないとどこにもピントが合っていない」状態のことを指します。この記事では、遠視が起こる仕組みとその原因について解説します。
作成日:2023/1/18 更新日:2026/03/09

遠視とは?屈折異常の仕組み
目の機能はしばしばカメラに例えられます。カメラのレンズに相当するのが、角膜(黒目)と水晶体、フィルムが網膜です。外から入ってきた光は、角膜と水晶体で曲げられて、網膜の上に焦点を結びます。

水晶体が厚みを増やして、屈折力(光を曲げる力)を強くすると、この焦点は前方(角膜側)へ移動します。これを調節と呼びます。
遠くのものを見たときに、この「調節」をすることなく網膜上に焦点が結ばれる状態のことを「正視」というのに対し、屈折力が強すぎたり弱すぎたりして、焦点が網膜からずれてしまう状態を「屈折異常」といいます。
遠視とは、屈折異常のひとつで、調節をしていない状態では網膜より後ろで焦点が合ってしまう状態のことをいいます。軽度の場合は、目の調節が働き、焦点が網膜上へ移動し、よく見える状態をつくることができます。

遠視の種類は2つある
遠視は、上のイラストのように焦点が網膜に合わないために起こりますが、遠視には、「軸性遠視」と「屈折性遠視」の2種類があります。
- 軸性遠視:眼軸(がんじく:眼球の奥行のこと)が短いために起こる遠視のことです。
- 屈折性遠視:角膜や水晶体の屈折力(光を曲げる力)が弱いことにより起こる遠視です。
遠視の原因は遺伝の影響が大きい1)
遠視は、角膜や水晶体の屈折力に対して相対的に眼軸が短いために、焦点が網膜の後方にずれることで生じます。
遠視の一因として、遺伝が挙げられます。多数の遺伝子変異が小さく積み重なって関与している可能性や、遠視の方の近親者(兄弟姉妹や罹患者の子ども)で発症リスクが高いことが知られています。
また、子どもには強い調節力があり、ある程度の遠視は調節できてしまうため、日常生活では気づかれにくいケースがあります。
しかし、調節が過剰に働き、後述する調節性内斜視や弱視につながることがあるため、早期発見と矯正が重要です。大人になるにつれ、調節力は衰退するので、子どものときより遠視に気づきやすくなります。
近視との違い
遠視は近視とは異なる屈折異常のタイプであり、それぞれ見え方に特徴があります。
屈折異常の種類 | 焦点位置 | 見え方の特徴 | 日常生活で困ることの例 |
|---|---|---|---|
遠視 | 網膜の後方 | ・子ども:調節力が強いため、程度によっては問題なく見えることがある。実際には近くを見るときに負担が大きくなっている ・遠視が強い成人・高齢の方:見る対象との距離が遠くても近くても見えにくくなる | ・子ども:程度によるが、見える子どもはあまり困らない。 ・遠視が強い方や高齢の方:運転時に道路標識とカーナビゲーション(カーナビ)画面の両方ともぼやける。手元の文章が読みにくくなり、新聞などを読むのがおっくうになる |
近視 | 網膜の手前 | ・遠くがぼやけやすい。見る対象に近づくと焦点が合うので見えやすくなる | ・運転時であれば標識が、授業中であれば少し離れた黒板が見えづらい |
関連記事リンク:近視と遠視の違いとは?症状や見え方、レンズでの矯正方法について
遠視の症状
遠視では、どんな症状が出るのでしょうか。
関連記事リンク:遠視はどんな見え方になるの?子どもの遠視にも注意を
<大人の場合>
目が常に調節しようとするため、目の疲れや、眼精疲労による肩こり、頭痛、吐き気などが起こることがあります。
また、正視の状態に比べて、近くを見る時により多くの調節が必要になるため、老眼の症状が早めに出る場合があります。
・日常生活で感じる遠視の不便さ
遠視が強くなると近くも遠くも見えにくくなるため、日常生活のさまざまな場面で不便を感じます。例えば、運転時に道路標識(遠方)とカーナビ画面(近方)の両方ともぼやけることがあります。
ただし、遠視が軽い、調整力が十分にある場合は、見え方に不便を感じないこともあります。
<子どもの場合>
遠くも近くもクリアに見るために、常に調節をしなければならないのは大人と同じですが、遠視の程度により斜視になったり弱視になったりする可能性があります。
この場合、できるだけ早い時期での治療(遠視を完全に矯正すること)が非常に重要になります。明らかに見えにくそうにしている場合、目の向きが揃っていない気がする場合など、気になる行為があれば早めに眼科を受診しましょう。
・子どもの遠視が見過ごされやすい理由1),2)
子どもは目に備わっている調節力が強いため、問題なく見えることが多いです。子どもから「見えにくい」と訴えることは少ないのですが、これが落とし穴になっていて、診断や治療が遅れる原因となります。
上記に加え、子どもに以下のような状況がみられたら、眼科での屈折検査をご検討ください。
□ 読書・お絵描きといった細かい作業が長続きしない、時に困難
□ 疲れやすい
□ 頭痛(特に、近業などで目を酷使しているとき)
□ 集中力に欠ける
□ 目で得た情報と手の動きをうまく協調させられない
遠視と老眼の違いとは?
遠視を矯正するレンズの度数には「+」がついています。老眼を矯正するレンズ(老眼鏡など)の度数にも同じ「+」がついています。このことから、遠視と老眼は混同されがちです。
遠視は、「調節をしていない時に網膜上に焦点を結ばない」状態であり、老眼は、「調節をする力が弱くなるために網膜上に焦点を結ばない」状態です。

原因は異なるものの、結果として「焦点が網膜の後ろに結ばれる」状態になるのは同じなので、矯正に用いるレンズが同じなのです。「+」がついているレンズは「プラスレンズ」といい、光を集めるレンズです。
このレンズを用いることで網膜の後ろにあった焦点が前方(網膜上)へ移動し、よく見える状態になるのです。


老眼は40歳頃から誰もが経験する症状です。
近視の人はその年齢になっても「裸眼なら」近くが見えるので、老眼にならないと思われがちですが、「裸眼の状態でないと(遠くを見るための眼鏡やコンタクトレンズを外さないと)」見えないことからわかるように、近視の人も老眼になります。
関連記事リンク:近視と遠視の違いとは?症状や見え方、レンズでの矯正方法について
年齢・原因での違い
生まれた時、ほとんどの赤ちゃんは遠視ですが、成長するにつれて遠視は自然に治っていき、1歳になるまでに遠視のままでいるのは4%未満という報告もあるようです1)。また、遠視は屈折異常に位置付けられます。
一方、老眼は加齢による水晶体の硬化や調節力の低下によるもので、40歳前後から誰にでも起こる現象です。また、老眼は調節異常であり、屈折異常ではありません。
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遠視によって起こる弱視とは?
「弱視」とは、医学的には「視力の発達が障害されて起きた低視力」と定義されていて、屈折異常を眼鏡などで矯正しても視力が十分に得られない状態を指します。
子どもの視覚は、おおむね生後3年間で大きく発達しますが、その後も8歳ぐらいまで発達が続きます。
この間、視覚が正常に発達するには、目が適切な視覚刺激を受けることが必要で、十分な視覚刺激が受けられない状態が続くと、視覚の発達が妨げられ弱視になってしまうことがあります。
強度の遠視があると、調節力の強い子どもの目であっても「どこもよく見えない」という状態になってしまうため、弱視の原因となります。
早期に発見し、遠視をしっかり矯正することで「よく見える」状態を作ってあげることが、弱視の予防につながります。
関連記事リンク:弱視 症状や治療法などを解説
子どもの弱視発症リスク
強い遠視のある子どもの場合、視力の発達期に適切な矯正が行われないと弱視(屈折性弱視)を発症しやすいといわれています。発見が遅れると、将来の視力にまで影響を残します。
ただ、屈折性弱視は子どもの行動に現れないことも多く、親が子どもを生活の中で観察していても気づきにくいことが問題です9)。
また、屈折性弱視の原因をもつ子どもは、生まれてからずっとピントがぼやけた状態で過ごしているため、視力が0.3程度であれば見え方に不自由を感じません9)。
屈折性弱視の原因となる強い遠視を3歳児健診で発見できれば、完全に矯正することで、小学校に入学するまでに矯正視力(コンタクトレンズや眼鏡で矯正した時の視力)の成長が期待できます。
最近は、フォトスクリーニングと呼ばれる屈折検査が3歳児健診でも使われるようになりました3,9)。健診や眼科での相談を通じて、早期発見に努めるとよいでしょう。
遠視と斜視の関係
斜視とは、左右の目で視線が違う方向に向いている状態のことを言います。つまり、片方の目が正面を向いているのに、もう片方の目が内側や外側、上や下など、違う方向を向いている状態です。
様々な種類の斜視がありますが、中等度の遠視は「調節性内斜視」という斜視の原因になることがあります。
子どもの調節性内斜視について
私たちは近くのものを見るとき調節を働かせますが、この時同時に「輻輳(ふくそう:より目のこと)」が起こります。
中等度の遠視があると、ものを見る時に過剰な調節が働き、それに伴い過剰な輻輳が生じ、内斜視(黒目が鼻側に寄る)の原因となるのです。
関連記事リンク:斜視 種類や症状、治療法について解説
調節性内斜視は、遠視による過剰な調節(ピント合わせ)が原因で黒目が鼻側に寄ってしまう状態で、1歳半~3歳が発症のピークとされます4)。
親が気づくサインとしては、視線がずれるように見える、などがあります5)。子どもにこうした様子が見られたら、早めの眼科受診をおすすめします。
遠視の治療方法はあるの?
医学的に、遠視を根本的に改善する方法はないとされています。
日常生活に支障が出ている場合や、斜視・弱視などの症状が認められる場合には、眼鏡やコンタクトレンズによって、遠視を矯正することが一般的な対処法です。軽度の遠視では、「見え方は問題ないがどうも疲れる」という症状の場合もあります。
遠視を放置しておくと、眼精疲労を起こし、目以外の部位にも肩こりや頭痛といった不調が起きてくることがあります。さらに、年齢によっては手元がよく見えないことで、仕事や勉強に集中できないといった悪影響もあるでしょう。
眼科でそのような症状の原因を確定してもらい、必要に応じて眼鏡やコンタクトレンズを処方してもらいましょう。
眼鏡・コンタクトレンズによる矯正
遠視の矯正には凸レンズを用いた眼鏡やコンタクトレンズが使われます。レンズの中心が厚く周辺が薄いのが特徴で、焦点を網膜上に合わせるように矯正します。
医師と相談する際は、レンズの度数だけでなく、生活スタイルや年齢なども考慮しましょう。子どもでは、視力の発達を守るため完全に矯正することが基本です。
中高年では老眼が加わるため、遠近両用レンズなどが選択肢に入ります。矯正方法は、必ず眼科で相談しましょう。
・遠視の方向けのアキュビュー® コンタクトレンズ製品一覧はこちら
https://www.acuvue.com/ja-jp/products/near-or-farsightedness/
レーシック手術は遠視に効果的?6)
レーシック手術は角膜を削って屈折力を変え、焦点を網膜上に合わせる方法です。対象は18歳以上で、矯正量は6D(ジオプター;度数の単位)が限度とされています。
なお、目に異常(円錐角膜、炎症など)があると手術を受けられません。また、術後に感染症、ドライアイなどのリスクがあるので、術後は医師に経過をフォローしてもらいましょう。
日常生活での目の負担を減らす方法
目の負担軽減策は、遠視・近視などで大きな違いはありません。
例えば、一般的なデジタル眼精疲労対策として、スクリーン使用時間の短縮、照明環境の改善〔①明暗の対照が著しくない室内照明及びまぶしさ(グレア)防止のための間接照明、②ディスプレイと書類を交互に見る作業では、明るさが著しく異ならないようにして、机の上の照度は300ルクス以上を目安にする、③太陽光が差し込むときのブラインド使用〕、定期的な休憩、遠方への焦点移動などが有効です7,8)。
遠視の方は、日常生活で「目の調節の負担」を考慮するとよいでしょう。
遠視の治療(矯正含む)目的の一つは「調節の負荷低減」とされていることからも10)、遠視を矯正すると目を酷使せずに済むため、負担軽減につながることが示唆されています。
まとめ
遠視は近くも遠くも見えにくくなり、常に調節をしていないと「どこも見えない」目です。程度によりますが、矯正せずに生活をしていると目に負担がかかることがあります。
目が疲れやすい、人より早く老眼が来た気がする、など、心当たりがある方は眼科医に相談しましょう。
<参考資料>
1) National Library of Medicine(NIH):Mediline Plus. Farsightedness
https://medlineplus.gov/download/genetics/condition/farsightedness.pdf
2) 公益社団法人日本眼科医会:子供の遠視
https://www.gankaikai.or.jp/health/30/index.html
3) 石岡みさき:「小児プライマリ・ケアで診る子どもの眼疾患」第1版 南山堂, 2024
4) 日本弱視斜視学会:一般の皆さまへ 内斜視
https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/strabismus/strabismus3
5) 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター:患者・ご家族の方へ 斜視
https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/019.html
6) 日本眼科学会屈折矯正委員会:屈折矯正手術のガイドライン(第8版). 日眼会誌 128 (2): 135-138, 2024
7) Kaur K, et al.:Ophthalmol Ther 11(5):1655-1680, 2022
8) 厚生労働省ほか:情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf
9) 公益財団法人日本眼科医会:STOP!弱視見逃し 3歳児眼科健診における 屈折検査の導入と精度管理に向けて
https://www.gankaikai.or.jp/school-health/stop_amblyopia.pdf
10) American Optometric Association:QUICK REFERENCE GUIDE Care of the Patient with Hyperopia
https://uploads.teachablecdn.com/attachments/FciJ2yr8Qs6FF0EC3SlE_QRG-16.pdf






