老眼にはどんなコンタクトレンズが合う?遠近両用コンタクトレンズについて医師が解説します
作成日:2024/11/13 更新日:2025/05/20

老眼とは?
私たちの目は、遠くが見える(矯正)状態であっても、「調節」を働かせることで、中間距離も近くも、ピントを合わせて見ることが可能です。調節は目と脳の連携プレーの賜物であり、目においては、「水晶体」という目の中のレンズが厚くなったり薄くなったりしてピントが合う距離を変えています。水晶体は年齢とともに少しずつ硬くなり、厚くなりにくくなっていきます。その結果、調節する力(調節力)は10代から低下の一途をたどり、「遠くが見える(矯正)状態のときにピントを合わせることができる最も近い点:近点(きんてん)」はだんだん遠ざかっていきます。40代になり、この近点が30~40cmくらいになると、日常生活の中で「あれ?近くが見えにくい?」と感じるようになります。調節力が低下し近点が遠ざかっていく現象は10代の頃から起きているのですが、日常生活の中で不便を感じ始めることで、その現象は「老眼」と呼ばれるようになるのです。
老眼のサイン(症状)とは?
下記のような症状が出てきたら、「老眼」の可能性があります。
- スマートフォンや新聞などの小さくて細かい字が読みづらい
- 本やスマートフォンを見ていると目が疲れる
- ピントが合わせづらく、ぼやけて見える
- うす暗いところで近くのものが見えづらい
老眼はいつから始まる?その対策方法とは?
近点が30cmより遠くなり、日常生活で不便を感じ始めると、改めて「老眼」という名前が付くようになりますが、「水晶体がだんだん硬くなり、調節力が低下し、近点が遠くなる」という現象自体は、10代からずっと続いているのです。
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実際に日常生活で不便があるのでしたら、何らかの対策をして快適な毎日を送りたいものです。その対策にはさまざまなものがあります。ここではコンタクトレンズを使用した対策法について簡単にご紹介します。
①単焦点コンタクトレンズ(近視・遠視・乱視用)で遠く(あるいは近く)が見えるようにしておいて、近く(あるいは遠く)は眼鏡を併用する
②左右の目を異なる矯正状態にして、片目は遠くがよく見え、もう片方は近くがよく見えるように度数を調整する(モノビジョン)
③遠近両用コンタクトレンズを使用する
老眼の矯正(対策)ができる 遠近両用コンタクトレンズとは?
近視や遠視を矯正するコンタクトレンズは、レンズの中に1つしか度数がありません。しかし、遠近両用コンタクトレンズは、レンズの中に多くの度数があります。遠くを見るための度数(遠用度数)・近くを見るための度数(近用度数)があり、その2つの度数を段階的につなぐ形でさらに多くの度数が入っているもの(累進屈折型)があります。現在、さまざまなデザインのものがありますが、遠近両用ソフトコンタクトレンズでは、レンズの中央に近用度数があるもの(中心近用デザイン)が多いです。
ちなみに、この遠用度数と近用度数の差を加入度数といいます。加入度数が高いほど、手元を見る時のサポートが強いということを意味しています。加入度数は製品により1種類しかないものから4種類(4段階)あるものまで、こちらもさまざまです。小さなレンズにたくさんの度数が入った設計になっており、その度数の入れ方がメーカーにより、あるいは製品により異なるので、装用するレンズによって見え方の特徴も異なります。
また、遠近両用コンタクトレンズには、ハードコンタクトレンズもあります。

遠近両用眼鏡と遠近両用コンタクトレンズの違い
遠近両用眼鏡は、レンズの上の方に遠くを見るための度数、下の方に近くを見るための度数が入っており、特に累進レンズの場合はその間を中間を見るための度数がつないでいる構造になっています。コンタクトレンズとは違い、レンズはフレームに固定されて目の前にありますので、見たいものの距離に応じて、視線(目の向き)を動かすことによりレンズの中にある度数を使い分けています。このような見え方を「交代視(こうたいし)」といい、遠近両用ハードコンタクトレンズの中にも交代視で見るデザインのものがあります。しかし、遠近両用ソフトコンタクトレンズでは視線を動かしてもレンズが目と一緒に動くので、目とレンズの位置関係が変わりません。そのため、レンズの中の度数を使い分けること(交代視)はせず、「同時視」と呼ばれる見え方をしています。
老眼鏡と遠近両用コンタクトレンズの違い
老眼鏡とは、近くのものを見るのに適した度数の眼鏡です。単焦点コンタクトレンズで遠くがよく見える状態にしておいて、近くを見る時には加えて老眼鏡を使用するということも可能です。老眼鏡をかけているときは近視の状態になっているため、老眼鏡をかけたまま遠くを見るとぼんやりとよく見えない状態になります。老眼鏡は必要に応じてオーダーメイドで作ることも可能で、見え方の質も良く、近くを見るということにおいては優れた矯正方法の1つです。しかし、見たいものの距離に応じて眼鏡をかけたり外したりする必要があったり、持ち歩かないといけなかったりという点を、欠点ととらえる方もいらっしゃるかもしれません。

まとめ
「老眼」といわれると、ちょっと戸惑ってしまう方も少なくないと思います。しかし、その調節力の低下はもうずっと前から始まっていたことです。調節力が低下しても日常生活に不便がなければ対策は不要ですが、不便をきたしているのに我慢して生活するのはつらいですね。老眼の対処法はたくさんあります。遠近両用コンタクトレンズの中にもさらに多くの種類のものがあります。対策方法の選択肢の1つとして、遠近両用コンタクトレンズを検討してみてはいかがでしょうか。これは、世にいう「老眼」かな?と思ったら、まずは眼科医にご相談ください。
監修

ひぐち眼科 院長
樋口 裕彦 先生
1985年北里大学医学部眼科学教室入局。
米国Environmental Health Center-Dallas留学、北里大学医学部眼科学教室非常勤講師などを経て、1999年武蔵野市吉祥寺にひぐち眼科を開業。
2004年移転し、現在に至る。医学博士。