【老眼対策】遠近両用コンタクトレンズの仕組みと年齢別の選び方を解説
遠くが見えるように矯正すると近くが見えにくい…いわゆる「老眼」といわれる症状の対策方法の1つに遠近両用コンタクトレンズがあります。遠近両用コンタクトレンズにはハードコンタクトレンズもソフトコンタクトレンズもあります。ご自身にどちらが向いているのかは目の状態にもよりますので、眼科で相談するようにしましょう。ここでは遠近両用ソフトコンタクトレンズを中心に解説します。
作成日:2024/11/13 更新日:2026/03/04

遠近両用コンタクトレンズとは?老眼の症状と年齢による変化
遠近両用コンタクトレンズは、レンズ一枚で遠方も近方もクリアに見ることができる、いわゆる老眼(医学的には老視;以下は老眼で統一)1)用のコンタクトレンズです。
老眼は、目のピントを調節する力(調節力)が衰えることによって起こります1,2)。老眼と聞くと、「高齢(一般に65歳以上)になってから起きるものだ」と思われがちですが、実は、目の調節力は10代から下がっています。
それでも若い時は調節力の低下に気づかないのですが、40代を過ぎると「あれ、近くを見ようとすると目のピントが合わなくなってきた」と感じ始める人が増えてきます。50~60代で、調節力の低下が最も著しくなります1,2)。
関連記事リンク:老眼とは?症状はいつから始まるかや矯正方法を医師が解説します
老眼の初期症状
40歳を過ぎて、以下のようなことがたびたび起きるようになったら、目の調節力が落ちてきたこと、すなわち老眼を意味します1)~3)。
- 手元のピントが合いにくい。新聞や雑誌、地図が見にくいので、少し離すと見やすくなった
- 近くを見たあと、遠くにピントが合いにくい
- 薄暗い場所で近くの文字が読みにくい。暗い場所で文書の整理などをすると見にくくて、肩こりや頭痛が起きる
- 辞書や時刻表などの細かいものを見ていると疲れやすくなった
なお、近視・遠視・乱視は、眼球の構造的な理由で光の焦点が網膜の正しい位置に合わないので、視界がぼやけることがあります。一方、老眼は、加齢によって調節力が弱くなる、特に近くが見えにくくなる状態です。
老眼の初期は距離や明るさを工夫すれば見えることもありますが、焦点が自然にすぐ合うわけではなく、無理に合わせようとすると目が疲れてしまいます。
・老眼のセルフチェックリスト
老眼のセルフチェックをしてみましょう1)~3)。
☐ 近くのもの、手元が見づらい(針に糸を通しづらい等)
☐ 目が疲れやすくなる
☐ 本や新聞などを読むとき、目から離さないと文字が読めない
☐ 近くを見た後に遠くを見ると、ピントが合うのが遅くなった
☐ 頭痛が出やすい
☐ 暗い場所では特に近くが見づらい
☐ 40歳を過ぎてから上記の症状が増えてきた
遠近両用コンタクトレンズの構造
近視や遠視を矯正するコンタクトレンズは、レンズの中に1つしか度数がありません。しかし、遠近両用コンタクトレンズは、レンズの中に多くの度数があります。
遠くを見るための度数(遠用度数)・近くを見るための度数(近用度数)があり、その2つの度数を段階的につなぐ形でさらに多くの度数が入っているもの(累進屈折型)もあります。
現在、さまざまなデザインの製品がありますが、遠近両用ソフトコンタクトレンズの場合は、レンズの中央に近用度数があるもの(中心近用デザイン)が多いです。
この遠用度数と近用度数の差を加入度数といいます。加入度数が大きいほど、手元を見る時のサポートが強いということを意味しています。
製品によりますが、加入度数は製品により1種類しかないものから4種類(4段階)あるものまで、こちらもさまざまです。

遠近両用コンタクトレンズの見える仕組み
~遠近両用眼鏡とは違うの?~
非常に小さなレンズなのに1枚の中にたくさんの度数があり、遠くから近くまで見えるようになるのは不思議だと思う方もいらっしゃるでしょう。
遠近両用眼鏡だとレンズがフレームに固定されていて動かないので、視線を移動させてレンズの中にある度数を使い分けるというのはイメージしやすいと思います。
このような見え方を「交代視(こうたいし)」といい、遠近両用ハードコンタクトレンズの中には、交代視で見るデザインのものがあります。
しかし、遠近両用ソフトコンタクトレンズでは視線を動かしてもレンズが目と一緒に動いてしまい、目とレンズの位置関係が変わらないので、レンズの中の度数を使い分けること(交代視)はできません。
つまり、遠近両用眼鏡と遠近両用ソフトコンタクトレンズでは、見える仕組みが全く異なるということです。
遠近両用ソフトコンタクトレンズの見える仕組み
上記にある通り、遠近両用眼鏡や一部のハードコンタクトレンズは交代視と呼ばれる仕組みを使って遠くも近くも見えるようにしています。
一方、遠近両用ソフトコンタクトレンズは、「同時視(どうじし)」と呼ばれる仕組みで見えるように作られています。
これは視線移動によって度数を使い分けるのではなく、常に全ての度数を使いながら、脳が最もピントが合っている見え方だけを認識してくれます。
これだけでは理解が難しいと思いますので、遠近両用ソフトコンタクトレンズを装用した際の見え方のイメージ図で、遠くの景色、特に塔に注目して見てみましょう。遠くを見るための度数(遠用度数)を通してみた塔はピントが合っています。
しかし同時視なので、遠くを見ているときも、近くを見るための度数(近用度数)やその間を見るための度数も全てを通して見ることになります。これらのものは度数が合っていませんのでピンボケの塔になります。
つまり、先ほどのくっきりした塔にピンボケの塔が重なってしまうのです。これで見えるのでしょうか?

ここで活躍するのが脳です。この、ピンボケの塔の中にくっきりした塔があるという情報を受け取った脳が、ピンボケの塔は採用せず、くっきりした塔だけを認識してくれるのです。
人間の脳はすごいですね。脳が行うこの処理のおかげで同時視が可能になり、多くの遠近両用ソフトコンタクトレンズが流通しているのです。
視線移動が必要なく、広い自然な視界が得られるのが長所ですが、近用度数が強くなるにつれてくっきりした塔に乗るピンボケの程度が強くなるのが同時視の短所です。
ちなみに、白内障手術で用いられる多焦点眼内レンズも、この「同時視」で見ています。
遠近両用コンタクトレンズのメリット
ここでは、遠近両用コンタクトレンズのメリットについて、2つご紹介いたします。
メリット①:コンタクトレンズの利便性
遠近両用コンタクトレンズを使うと、老眼鏡をかける・持ち運ぶ・調整する必要性が減ります4)。老眼鏡のつけ外しなどで仕事等に不便を感じる方は、遠近両用コンタクトレンズを検討してみてはいかがでしょうか。
メリット②:活動的なライフスタイルに合う可能性
老眼は加齢現象ではありますが、人生100年時代になった現在、いつまでも溌剌(はつらつ)としていたいものです。
遠近両用コンタクトレンズに限りませんが、コンタクトレンズは目に直接装用するため、視野を広く保つことができます5)。
また、雨、雪、結露、汗などによる水分が付着しませんし、ゴーグルやサングラスも着用できるので、スポーツ等の屋外活動に適しています5)。
また、眼科領域専門誌には、「遠近両用コンタクトレンズの装用は、装用者により活動的で若々しい感覚をもたらし、心理的な健康や社会的な幸福感を高める可能性がある」と記されています4)。
眼科医と一緒に遠近両用コンタクトレンズを検討しましょう
老眼症状を自覚し始めるのは40代以降の方が中心です。しかし、「老眼だろう」と思っていたら実は別の目の病気だった…といったこともあります。早合点せず、眼科を受診して老眼なのかどうかを最初に確かめましょう。
眼科で老眼と診断され、矯正が必要だと眼科医が判断した場合や患者さんが矯正を希望した場合は、患者さんの目に合った矯正方法の選択肢が検討されます。
前述したように、遠近両用コンタクトレンズも老眼の矯正方法の一つです。ご自身にとって最適な矯正方法を眼科医に選んでもらいましょう。
例えば、仕事で会議や打ち合わせが多く、会議室内のプロジェクターに投影された大画面、手元にあるPCの画面や会議資料、会議に参加している人の顔を何度も見る必要がある方は、その都度ピントを合わせるため疲れを感じることがあります。
このような方が眼科に行き、見え方の原因が老眼だと分かったときには、選択肢の一つとして遠近両用ソフトコンタクトレンズを眼科医から提案されることがあります6)。
老眼を矯正できる遠近両用コンタクトレンズには、遠用度数に加えて、近方視に必要な追加の度数(加入度数)が設定されています。加入度数を変えることで補正の度合いが変わってきます。
遠近両用コンタクトレンズはさまざまなタイプがあり、価格も異なります。コンタクトレンズに何を求めるか、シチュエーションなどの希望を整理しておくと良いでしょう。
【年齢別】適している遠近両用ソフトコンタクトレンズの加入度数
◇40代の方
老眼の症状を自覚し始める時期ですが、多くの場合、進行は軽度です。
もしコンタクトレンズで矯正する時は、レンズの加入度数(近方視に必要な追加度数)は低いタイプ(低加入度数)が用いられることが多いです(個人差はあります)。
◇50代の方
一般に老眼の症状が徐々に重くなり、近方だけではなく、中間距離(近いところと遠いところの間)のピントも合いにくくなる時期です。
加入度数が中程度のタイプ(中加入度数)を、眼科医から提案されることがあるでしょう。
◇60代の方
老眼が進行し、一般的に調節力が0.5D程度まで低下する年代です2)。
低加入度数に比べて、高加入度数ではより近い距離にピントを合わせやすいように設計されているため、近くを見る機会の多い方の選択肢になる場合があります。
最終的には、近くの見え方と遠くの見え方とのバランスなどを確認しながら、眼科医が判断します。
関連記事リンク:老眼にはどんなコンタクトレンズが合う?遠近両用コンタクトレンズや老眼の症状を紹介
遠近両用コンタクトレンズのデメリット
遠近両用コンタクトレンズにはメリットも多いですが、デメリットも存在します。
デメリット①:見え方の質が落ちる
交代視の遠近両用コンタクトレンズには複数の度数が入っており、視線がどの部分を通るかで見え方が変わります。視線が適切な部分を通らないと、像がぼやけて見えることがあります。
同時視の遠近両用コンタクトレンズでは、近くを見るための度数(近用度数)が強くなるにつれて、にじみやぼやけを感じやすくなる傾向があります。
デメリット②:人により遠近両用コンタクトレンズとの相性がある
遠近両用コンタクトレンズは1枚のレンズに多くの度数が入っていますが、中心に近くを見る度数があるもの、遠くを見る度数があるものなど、度数の配置の仕方がメーカーによって異なるため、装用したときの見え方にもメーカー間で差があります。
そのため、はじめに試したメーカーのコンタクトレンズが合わなかった場合でも、他のメーカーの製品を試してみる価値は十分にあります。
デメリット③:脳がコンタクトレンズの見え方に慣れるためには、少し時間がかかる
交代視にしても同時視にしても、それまでのレンズとは見え方が違うと感じることもあります。そのようなとき、車の運転などは見え方に慣れてからにしたほうが安心でしょう。
デメリット④:日常生活での見え方を確認しよう
日常生活では、眼科の検査と違って、個々の患者さんのライフスタイルによって見るもの/見たいものが変わります。日常生活での見え方も確認し、不便があれば眼科で相談するようにしましょう。
デメリット⑤:折々、度数調整が必要です
若い方でも時間の経過とともに目の状態が変わることがありますが、遠近両用コンタクトレンズが必要な世代でもそれは同じです。
加えて、近くの見え方はだんだん変わっていくものですので、「眼科で検査した後は、ずっと近くも見えていたのに最近見えにくくなったな」ということが、どうしても起こります。
度数の問題ではなく目の病気が起きている可能性も否定できませんので、そのような場合も眼科で相談するようにしましょう。
遠近両用コンタクトレンズに慣れるポイント
使い始めたときは、見え方に戸惑うかもしれません。しかし、そのうち脳が慣れてきて、見え方が安定してきます8)~10)。
慣れるまでの期間と対処法
新しいコンタクトレンズに慣れるためには、脳の適応が重要です。脳が遠近両用コンタクトレンズの見え方に慣れるまでには1~2週間程度必要であることが示唆されています(個人差があることにご注意ください)9)。
関連記事リンク:コンタクトレンズ装用中に視界がぼやける・かすむのはなぜ? 原因や対処法を解説
関連記事リンク:コンタクトレンズの装用で目がゴロゴロする原因は? 異物感や違和感を和らげるための対処法
まとめ
遠近両用コンタクトレンズは、レンズ1枚で遠くも近くも見やすくするレンズです。レンズ内には複数の度数が入っており、交代視や同時視といった仕組みを利用しています。
老眼の進行度に応じて必要な加入度数が変わるため、40代・50代・60代で適したタイプや度数の目安も変化します。
年齢に加え、ご自身の症状やライフスタイルによる見え方の変化を踏まえて、ご自身に合った遠近両用コンタクトレンズを眼科で選んでもらうことが重要です。
<参考資料>
1) 公益社団法人日本眼科医会:病名から調べる 老視(老眼)
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=36
2) 丸尾敏夫:「老眼と正しくつきあう」第1版 岩波書店, 2002
3) American Academy of Ophthalmology:What Is Presbyopia
https://www.aao.org/eye-health/diseases/what-is-presbyopia
4) Schaeffer M:Presbyopia Physician 3: 37-39, 2023
5) Khan H, et al.:International Journal of Ophthalmology and Optometry 5(1):29-32, 2023
6)東原尚代 日本白内障学会誌 33:47-49, 2021
7) 日本コンタクトレンズ学会:コンタクトレンズ診療ガイドライン 日眼会誌 118(7):557-591, 2014
8) Zeri F et al,:Cont Lens Anterior Eye 47(3):102137, 2024
9) Fernandes P, et al.:Doc Ophthalmol. 145(1):37-51, 2022
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