不正乱視とは?症状や見え方・矯正方法について医師が解説します
作成日:2022/12/13 更新日:2025/04/25

不正乱視とは?
そもそも乱視とは、角膜(黒目)や水晶体(凸レンズ型をした眼球内の透明な組織)の歪みによって光の屈折が乱れ、外から入ってきた光が1点で焦点を結ばなくなってしまう状態で、「正乱視」と「不正乱視」の2種類に大きく分けられます。
正乱視は外から入ってきた光の焦点が2つ形成されるのに対し、不正乱視はそれ以上の焦点が作られてしまいます。角膜や水晶体に不規則な歪みがあるため(それぞれ角膜不正乱視、水晶体不正乱視)に、そのような状態になってしまうのです。当然、見え方は損なわれます。

不正乱視の原因
不正乱視の原因は、円錐角膜など角膜形状異常を生じる疾患や、角膜混濁、角膜外傷などの角膜疾患による角膜不正乱視が主ですが、初発白内障などによる水晶体不正乱視や、眼内レンズ(IOL:intraocular lens)の位置異常に起因する不正乱視もあります1)。
不正乱視の見え方
不正乱視であってもごく軽度な例では、正乱視と同様の見え方をします。しかし、乱視の程度が強くなると違いが現れます。正乱視の場合、像のブレは縦・横・斜めなど一定の方向に限られますが、不正乱視では像が多方向にブレてしまうのが特徴です。
不正乱視の矯正方法
正乱視は、眼鏡だけではなく、ハードコンタクトレンズやソフトコンタクトレンズでも矯正可能です1)。しかし、角膜の表面がデコボコになっている不正乱視では、ソフトコンタクトレンズや眼鏡では矯正できないため、通常はハードコンタクトレンズを使用します。
ハードコンタクトレンズは硬い素材でできているので、レンズが角膜の形に沿って変形することはなく、形状が維持されます。そのため、レンズと角膜の間にある涙液も、レンズとしての役割を果たします。これを涙液レンズといい、このレンズの効果により、角膜の不正な形状による不正乱視を矯正することができます。ソフトコンタクトレンズで不正乱視の矯正ができないのは、やわらかい素材でできているので、レンズが角膜の形に沿って変形してしまい、涙液レンズがほとんど形成されないためです。

まとめ
乱視の見え方には個人差がありますが、その多くは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正可能です。自分の乱視の状態を正確に把握し、適切な視力矯正を行うためにも、まずは眼科を受診しましょう。
<参考資料>
1) 大路 正人 他 編:「今日の眼疾患治療指針」 第4版 医学書院, 2022
監修

道玄坂糸井眼科医院 副院長
糸井 素啓 先生
2010年に東京医科大学を卒業後、2012年に京都府立医科大学眼科学教室に入局。
同年より京都府立医科大学附属病院の円錐角膜・コンタクトレンズ外来を担当し、診療や研究に従事し、2021年に京都府立医科大学大学院 視覚再生外科学を修了。
2017年より道玄坂糸井眼科医院の副院長として診療に携わり、2022年にはさらなる研究の発展を目指し、University of New South Walesへ留学。2024年に帰国後、同大学のVisiting Fellowに就任し、引き続き道玄坂糸井眼科医院の副院長として診療と研究に取り組んでいる。