コンタクトレンズは処方せんなしで買える?知っておきたいリスクや購入手順を解説!
コンタクトレンズの使用者は年々増加し、現在では国民の約10人に1人が装用しているといわれています1)。最近はネット通販でもコンタクトレンズを購入できるため、「眼科に行くのは面倒だし、処方せん(指示書)なしで購入してしまおう」と考える人もいるのではないでしょうか?しかし、コンタクトレンズは、目に直接のせて使用する「高度管理医療機器」ですので、購入の際には、眼科医の専門的な知識にもとづき、自分の目に合った製品を処方してもらうことが重要です。この記事では、処方せん(指示書)なしでコンタクトレンズを購入するリスクなどについて解説します。
作成日:2022/12/13 更新日:2025/12/05

コンタクトレンズは処方せん(指示書)なしでも買える?買えない?
コンタクトレンズの処方せん(指示書)とは
「処方せん」とは、医師が医薬品を処方するために、薬の種類と量、投与方法などを記載した文書です。そのため、高度管理医療機器であるコンタクトレンズの購入時に眼科医が発行する 「コンタクトレンズ処方せん(指示書)」と医薬品の処方せんとは、本来は異なります。ですが、簡易的に「コンタクトレンズ処方せん」あるいは単に「処方せん」と呼ばれることもあります。
「コンタクトレンズの販売自主基準」2)では、購入者がコンタクトレンズを正しく、かつ、安全に使用できるように、販売業者に対して「眼科医の処方・指示に基づく販売」が推奨されています。
コンタクトレンズ処方せん(指示書)には、患者の名前や発行医療機関の情報のほか、「製品名」「製品の規格(ベースカーブ、度数、直径)」などが記載されており、具体的には以下のような内容が盛り込まれています。コンタクトレンズ処方せん(指示書)は、特定の製品の特定の規格と、基本的には一対一対応であるということになります。
コンタクトレンズ処方せん(指示書)の記載事項例2)
- 患者氏名
- 販売名(製品名)/メーカー名
- 規格(ベースカーブ、球面度数、直径、円柱度数、円柱軸、加入度数、その他)
- 数量(使い捨て、頻回交換、定期交換では箱数、1箱のレンズ枚数等)
- 装用方法(終日装用、連続装用)
- 発行日
- 有効期限(眼科医の指示による)
- 医療機関名、医師名、連絡先、捺印
- その他、特にコンタクトレンズの取扱いで指導すべき注意事項など
自分に合ったコンタクトレンズを知るための処方せん(指示書)の重要性
コンタクトレンズは、矯正するために必要なレンズ度数(D/ディオプター)だけでなく、レンズ内面のカーブ度合い(BC/ベースカーブ)や、レンズの直径(DIA/ダイアメーター)、などによって自分に合う製品が異なります。乱視の場合はさらに、円柱度数(CYL/シリンダー)や円柱軸(AXIS/アクシス)などの情報が加わります。自己判断で目に合わないレンズを使うと不快感を生じやすくなり、痛みや充血などにつながる可能性もあります。コンタクトレンズを購入するときは、医師に処方せん(指示書)を出してもらいましょう。
また、コンタクトレンズを処方するための検査で、ドライアイなどの病気がないかを確認したり、自分の目の状態に合わせた装用時間を指示されることがあります。
コンタクトレンズを処方してもらうための検査は、自分の目を守るためにも重要なのです。
コンタクトレンズは処方せん(指示書)がなくても購入可能?
「コンタクトレンズの販売自主基準」2)では、次のような販売方法の遵守が求められています。
眼科医の処方・ 指示に基づく販売2)
- 眼科医療機関への受診確認後、電磁的記録媒体を含むコンタクトレンズ指示書(以下「指示書」という)が発行されている場合は、指示書に基づいて販売する。
- 眼科医療機関への受診確認後、眼科医療機関がコンタクトレンズの適応を認めた購入者に対して指示書が発行されていない場合は、指示書に代わるコンタクトレンズ情報を確認し販売する。
- 眼科医療機関を受診していない場合は、購入者に対してコンタクトレンズによる健康被害について情報提供を行い、受診勧奨を行う。「処方箋不要」、「検査不要」等の眼科医療機関の受診が不要であると誤認させるような販売行為は不適切であること。
このように、コンタクトレンズを購入する際、販売業者への指示書の提出は義務付けられていません。しかし、ある調査によると、コンタクトレンズの装用によって眼障害を起こした人の中には、眼科を受診せず、コンタクトレンズを購入している人が数多く含まれていました3),4)。
この結果を受け、厚生労働省はコンタクトレンズ販売業者に対し、購入者が正しく安全にコンタクトレンズを使用できるよう、 使用方法と眼科受診について十分な説明をするよう勧奨しています。また、政府広報オンラインにおいて、コンタクトレンズによる目のトラブルに対する注意喚起をしています5)。

処方せん(指示書)なしでコンタクトを購入するリスクと安全対策
自分の目に合わないコンタクトレンズを使用し続けると、かえって見えにくくなったり、感染症にかかったりする危険性が高まります。「感染性角膜炎に関する調査*」では、角膜感染症患者のうち41.8%がコンタクトレンズ装用者でした。このような目のトラブルを避けるためにも、処方せん(指示書)は欠かせないのです。
また、コンタクトレンズケースから菌が検出されることもあります。レンズと合わせてケースのケアも忘れずに行いましょう。
*感染性角膜炎全国サーベイランス(2003年)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:日眼会誌 110(12):961-972, 2006
- 角膜感染症とは?原因や症状、コンタクトレンズ装用者が注意すべき点を解説
https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/contact-lenses/306/
コンタクトレンズの種類と特徴
コンタクトレンズには、ソフトコンタクトレンズとハードコンタクトレンズがあり、目の状態や用途などに合わせて処方されます。ソフトコンタクトレンズには、1日使い捨ての1dayタイプや最長2週間使える2weekタイプなどがあります。1dayタイプはレンズのケアが不要ですが、2weekタイプは毎日つけ外してケアします。ソフトコンタクトレンズは柔らかく目に馴染みやすい反面、不正乱視(角膜の表面が不規則に歪んだ乱視)の矯正ができません。
ハードコンタクトレンズは、数年間使える製品が多く、毎日つけ外してケアします。固い素材でできており、不正乱視の矯正ができる反面、ソフトコンタクトレンズに比べるとずれやすい特徴があります。
コンタクトレンズを使用する方へのアドバイス
コンタクトレンズを購入する際は、眼科で検査・処方を受け、眼科で出される処方せん(指示書)に従って製品を買いましょう。慣れるまでの間装用スケジュールは、医師に相談の上、医師の指示に従いましょう。また、少しでも違和感を覚えたら、すぐに眼科で検査を受けましょう。目の状態は変化しますので、定期検査も大切です。
- はじめてのコンタクトレンズの買い方・作り方
https://www.acuvue.com/ja-jp/new-start/how-to-buy/ - コンタクトレンズ装用中に違和感があるときの 症状別対処法とは?
https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/contact-lenses/117/
処方せん(指示書)を発行する眼科医がチェックしていること
眼科医による検査では、目の健康状態に異常はないか、コンタクトレンズの適正装用はできているか、視力低下の裏に目の病気が隠れていないか、適正な度数やコンタクトレンズと目の相性はどうか、といった点をチェックしています。
「コンタクトレンズは、度数が同じであれば、どの製品を使っても同じだろう」と考えていませんか?コンタクトレンズは度数以外にも違いがあります。BC(ベースカーブ:コンタクトレンズの内面のカーブ度合い)、DIA(ダイアメーター:コンタクトレンズの直径)といった記号と数値でレンズデータが表現されており、これらが異なるとフィッティングや見え方に違いが生じることがあります。
さらに、BCとDIAが同じであっても、メーカーや製品によってレンズの素材やデザインが違うため、それらの違いによってフィット感が変わってしまうこともあります。そのため、安全に装用するには眼科医の専門的な視点からコンタクトレンズを選択・処方してもらうことが重要です。
また、目の状態に関しても、ずっと同じとは限りません。前回購入時に眼科で視力検査を受けていても、実は視力や乱視の程度などが変化していて、最適な矯正度数ではなくなることもありますし、眼科医の検査を受けず、購入時に自己判断で度数を強めたり弱めたりすると、知らず知らずのうちに過矯正や低矯正になってしまい、目の疲れの原因になることもあります。さらに、目の状態によっては、2weekタイプや1monthタイプには適していないと判断される場合もあります。
このように、眼科医はさまざまな角度から、目の健康状態をチェックしています。コンタクトレンズを購入する際の検査や診察は、良い機会ですので、面倒くさがらず、ぜひ受診するようにしましょう。
定期的な眼科検診・検査の重要性
装用感に問題がなければ定期検査は必要ないと考えがちですが、定期検査は重要です。目は、自覚症状がなくてもトラブルが起きていることがあります。例えば、角膜(黒目)に傷が入り、気付かずに放置したため傷から感染して激しい痛みや充血に襲われたり、目に障害が残ったりすることがあります。また、コンタクトレンズの最適な度数は目の状態の変化とともに変わることからも、定期検査は欠かせません。
- コンタクトレンズを使用するなら必ず眼科の定期検査を受けましょう
https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/contact-lenses/210/
検診・検査の推奨頻度と検査内容
定期検査では、視力に変化がないか、レンズの度数が合っているか、結膜炎や充血、アレルギーなどの異常がないか、などを確認します。
- コンタクトレンズを購入するときの検査とは? ランドルト環(Cマーク)の意味や 検査の流れ・種類を解説
https://www.acuvue.com/ja-jp/memamori/contact-lenses/239/
処方せん(指示書)をもらった後の流れ:コンタクトレンズの正しい購入方法
コンタクトレンズを購入できる場所は、主に、販売店、インターネット通販です。
販売店
眼科医の検査・診察を受けコンタクトレンズ処方せん(指示書)を入手したら、それにもとづいてコンタクトレンズを販売する店舗で製品を購入します。処方せん(指示書)には有効期間があるので、その期間内に購入しましょう。
医薬品の処方せんでは、使用期間は交付日を含めて4日以内ですが、コンタクトレンズは「高度管理医療機器」であり、医薬品ではないので、期間は眼科医の指示によります。有効期間を超えないように注意しましょう。
コンタクトレンズ販売店選びのポイント
コンタクトレンズは目に直接装用するもの。「安ければいい」で買うのは危険です。販売店を選ぶ場合は、目の健康を守るために、以下のようなポイントも確認しましょう。
- 専門知識を持ったスタッフの在籍:コンタクトレンズ販売には、コンタクトレンズ販売営業所管理者の資格が必要
- アフターケアの充実度:未開封の製品交換、いつでも製品に関する質問に対応をしてくれる
インターネット通販
ネット通販で買う場合も、「眼科医の処方・指示に基づく販売」が推奨されています。購入するときは、処方せん(指示書)提出が必要な店舗か運営会社の概要と高度管理医療機器販売許可番号が明記されているかなどを確認し、処方せんに従って購入しましょう。
まとめ
コンタクトレンズ処方せん(指示書)なしで、自己判断でコンタクトレンズを購入すると、適切な矯正ができず、見えにくさや疲れやすさを招いたり、不快感を生じたりする危険性があります。また、眼科で定期検査を受けずに装用し続けると、初期には自覚症状がなくても、後にトラブルを悪化させてしまったり、コンタクトレンズそのものの装用を中止せざるを得なかったりする状態に陥る可能性があります。コンタクトレンズ購入前には眼科を受診し、検査、診察、処方を受けた上で購入しましょう。
<参考資料>
1) 公益財団法人 日本眼科学会:病名から調べる コンタクトレンズ障害
https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=19
2) 一般社団法人 日本コンタクトレンズ協会:コンタクトレンズの販売自主基準
https://www.jcla.gr.jp/file/clhanbaijishukijun_kaitei_Q&A_20180514.pdf
3) 厚生労働省医薬・生活衛生局長通知 平成29年9月26日付 薬生発0926第5号
コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0926_1.pdf
4) 独立行政法人国民生活センター:コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意ください -「医師からの事故情報受付窓口」からー
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170803_2.pdf
5) 政府広報オンライン:コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意を!
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201712/1.html











